英国を拠点とするアストンマーチン・レッドブル・レーシング(AMRBR)は、15年以上の歴史の中で、グリッドに並ぶ多くの最古参のチームよりも数多くの称賛を得てきました。チームのスローガンは次のように厳しい難題です ― 「人間の能力を最大化するために、適切なデータとアプリケーションを適切なタイミングとフォーマットで、適切な場所に提供すること」。人々の働き方を変革するデジタル技術を販売するソフトウェア企業であるシトリックスが2017年にこのチームのイノベーションパートナーになった理由の1つが、まさにスローガンの存在でした。
レース場でシトリックスを活用することにより、AMRBRは世界中で行われるあらゆるレースで勝利する可能性を高める強力な手段を手に入れました。デジタルインフラストラクチャを持つことで、すべての職種の従業員がその場所を問わず、優れた従業員エクスペリエンスが得られるようになりました。
AMRBRは800名超の従業員を擁し、そのうち500名以上がシトリックスを使用しています。Citrix Virtual Apps & Desktopとともに導入されたCitrix Hypervisor、Citrix ADC、Citrix Gateway、Citrix Content Collaborationで構成される包括的なシトリックスのテクノロジースイートが現在、同チームの業務のあらゆる部分を支えています。
イノベーションを推進する「ロードウォリアー」技術としてシトリックスを捉える
AMRBRは、工場のエンジニアが、世界20カ国以上のレース会場に毎年定期的に足を運ぶトラックサイドのロードウォリアーとコラボレーションを行っていることを誇りにしています。シトリックスが提供するテクノロジーによって、AMRBRのエンジニアは互いに協力しあいながら新たなデザインを具体化し、トラックサイドでリアルタイムに完全な意思決定を行えるようになり、まったく新しいレベルの「スピード感あふれる」創造性が生み出されます。
「私たちにとって、イノベーションパートナーの存在はとても重要です。社内には多くのノウハウが揃っていますが、レースチームとしては、効率的であることが欠かせません」。CIOのマット・カデュ(Matt Cadieux)氏はこう語り、次のように続けます。「私たちは車に集中しビジネスを改善していかなければならないので、ゲームチェンジをもたらす製品と専門知識を持ったキーテクノロジーパートナーが必要なのです。そうした人々と一緒に働くことで、はじめて大きな違いを生み出すことができるのです。」
従業員エクスペリエンスに悪影響を与えない優れたセキュリティが重要
レースビジネスの性質を考えると、セキュリティは最優先事項です。セキュリティは優れた従業員エクスペリエンスを提供するための妨げになってはなりませんが、一方、アクセス制御は厳格に行われる必要があり、リモートセッションのセキュリティは「ゼロトラスト」、つまりすべてのトラフィックは信頼できないことを前提しなければなりません。言い換えると、セキュリティは、身元、時間、Device Posture(デバイスの総合的なセキュリティ評価法)のパターンに基づいて、許可された担当者に適応的にアクセスを許可するコンテキスト認識に基づいて達成するということです。アクセスのセキュリティは強固である一方、ユーザーはデバイスやアプリを自由に選択することができます。
カデュー氏はさらに次のように述べています。「私たちは、関係者が必要とするタイミングでデータマップを提供する必要がありますが、それは安全な方法で行わなければなりません。それを可能にしてくれるのがシトリックスのテクノロジーだと確信しています」。
コロナウイルスによるビジネスの混乱は世界中の他の多くの企業よりも短期間で収まった
AMRBRはシトリックスを10年以上使い続けてきましたが、その間、チームは毎年20ものレースに参加し続けてきました。そして今年、コロナウイルスが突如として出現し、世界中の大多数の企業の事業を大混乱に陥れました。しかし、事業の性質上、AMRBRの技術基盤が長年にわたってリモートエンジニアをサポートしてきたこともあり、FIA(国際自動車連盟)が決断した工場閉鎖の前後を問わず、オフィスで仕事をする従業員を比較的スムーズにリモートワークにシフトすることができました。コロナウイルスの影響で在宅勤務となったAMRBR本社の同僚たちにとって、シトリックスを使用してリモートで快適な社員エクスペリエンスをすることが「ニューノーマル」となりました。
カーエンジニアリングチームのチーフエンジニアであるポール・モナハン氏と彼のチームは、シトリックスを使ってCADファイルを作成し、主要なアプリケーションを利用しています。ポール・モナハン氏は次のように述べています。「私を含むチームメンバーの多くは、テクニカルオフィスで毎日、シトリックスを使っています。このパンデミックが起こってから、何人かのスタッフに在宅勤務に移行してもらいましたが、実にスムーズにいきました」。
チーム代表のクリスチャン・ホーナー氏は次のように付け加えています。「世界的なパンデミックが深刻化しているため、F1の正式なシャットダウンが実施される前に、多くのスタッフを在宅勤務に移行させなければなりませんでした。シトリックスは極めて重要かつ安全な技術インフラストラクチャとアプリケーションを提供してくれていたので、チームメンバーはもとより、パートナーやサプライヤーとも密接に仕事を継続することができました」。
Citrix Virtual Apps and Desktopsはエンジニアが場所を問わずいつでも3DグラフィックスとCADをシームレスに利用可能にするソリューション
通常の状況においては ― 世界規模のパンデミックによる業務中断がなければ ― Citrix Virtual Apps and DesktopsとCitrix Hypervisorを組み合わせることで、AMRBRのエンジニアはどこからでも、グラフィカル表現がふんだんに含まれるエンジニアリングファイルやデータを表示し操作することができます。英国本社から3DデータやCADデータがホストされているため、レース現場のエンジニアは安全かつ迅速にワークフローを管理することができます。Citrix Hypervisorのコンポーネントにより、グラフィックの多いファイルやワークロードをダウンタイムなしにサーバー間でやりとりすることができます。複雑さや遅延が軽減されるため、エンジニアはより快適な従業員エクスペリエンスを得ることができ、生産性が向上し、仕事に集中することができます。
さらに、トラックサイドのコンピューターでデータを処理することで、時間を節約し、ワークフローを圧縮することができます。このことは、オントラックセッション中のトラブルシューティングや戦略立案にも極めて重要な役割を果たします。たとえば、チームが日曜日のレースに向けて準備をしている中、金曜日と土曜日に重要な決断を下すことができます。
Citrix ADCとCitrix Gatewayはユーザーエクスペリエンス全般の向上に寄与
AMRBRのレースチームは、最も重要なワークロードの一部をCitrix ADC上で安全に実行しています。これは、Citrix ADCが負荷を分散するとともに、サプライチェーンのサードパーティに安全なアクセスを提供する直接接続を可能にするからです。つまり、ネットワークの信頼性やパフォーマンスが犠牲にならないのです。
Citrix Gatewayは、仕事場がどこであろうと日常的にアプリケーションやデータにアクセスできることを求める従業員に、容易なアクセスをもたらします。さらに、単に容易なアクセスを提供するだけでなく、ユーザーエクスペリエンスを阻害することなく、厳格なセキュリティも維持されます。
シトリックスのテクノロジーがAMRBRの多くのユースケースを牽引
アストンマーチン・レッドブル・レーシングでは、どのチームのメンバーを選んでも、シトリックスに導かれて生まれたユースケースを見つけることができるでしょう。以下、いくつかの例をご紹介します。
ユースケース:週末のレースのためのF1マシンのセットアップ
レーストラックのエンジニアたちは、英国の工場から送られてきた新しいパーツを使ってF1マシンをセットアップします
ユースケース:空気力学情報へのアクセス
空気力学の専門家は、レースカーのテレメトリデータをリモートで監視することができます。彼らは、Citrix Workspaceアプリを使用して集中的なワークロードを数値やグラフを使って調査することができます。
ユースケース:ドライバーシミュレーション
英国本社(HQ)のAMRBRオペレーションルームでは、シミュレーション情報が提供されています。
ユースケース:レースオペレーションルーム
英国HQのレースオペレーションルームは、レースのある週末のあいだ、きわめて活気溢れるコントロールセンターとなります。Citrix Workspaceアプリは、HQとレース現場との間を結ぶ中心的リンクとして機能します。
カデュー氏は、「このビジネスをITインフラでサポートするためには、俊敏性と柔軟性が鍵となります」とし、次のように説明しています。「私たちは常に動きが速く、絶えず出張を繰り返す環境で仕事をしていますが、シトリックスのような重要なイノベーションパートナーのサポートのおかげで、現在の状況に素早く対応することができたのは間違いありません」。
未来へのレース
AMRBRは、今日のニーズと明日の厳しさの双方に会社が対応できるようにするテクノロジー基盤を構築するために何年にもわたって対策してきました。Citrix Workspaceをその基盤に加えることは次の大きなステップです。AMRBRはCitrix Workspaceの導入にはいくつものメリットがあると考えています。具体的には、ベンダーとのコラボレーションが改善されること、サプライチェーンの生産性が向上すること、効率性と生産性を低下させる煩雑なワークフローが簡素化されること、そしてユーザーが雑然とした作業を減らして、自分の役割のうち最も重要なタスクに集中できるようになることなどが挙げられます。
現在のところ、Workspaceはほんの一握りのチームメンバーにしか導入されていません。テクニカルパートナーシップの責任者であるゾーイ・チルトン(Zoe Chilton)氏は、ユーザーによるWorkspaceの利用について次のように説明しています。「シトリックスが私たちのために本当に実現してくれるのは、データとアプリケーションとツールをまさにあっと言う間に提供してくれることです。ですから、エンジニアたちは工場内の場所や日時に関係なく、ある日はテストリグで、また翌日にはオフィスで不自由なく仕事をすることができます。彼らはいつも同じCitrix Workspaceを開き、同じアプリケーションやツールを使い、データを開くことができるのです」。
一貫性と技術上の複雑さを軽減するため、もっと多くのユーザーにWorkspaceを利用してもらえるようにすることが、AMRBRが次に着手すべきことです。他のことと同様に、そのステージはエキサイティングでイノベーションに満ちたものになることは間違いないでしょう。