院内業務の効率化とよりよい診療の実現を目指し、約1,800台のPCおよびタブレット端末で利用する仮想デスクトップを用いた病院情報システムを、Citrix XenDesktopで構築。今後、院外からのアクセスやBYODへの発展も視野に

徳島大学病院は、医科診療部門と歯科診療部門で構成され、病床数は696床で、医科26診療科、歯科4診療科、45の中央診療施設などを展開。約1,600人の医師、歯科医師、医療技術者、看護職員、事務職員が「生命の尊重と個人の尊厳の保持を基調とし、先端的で、かつ生きる力をはぐくむ医療を実践するとともに、人間愛に溢れた医療人を育成する。」という基本理念に基づいた医療サービスを提供しています。

2013年度の外来患者数は約43万894人で、入院患者数は約22万1,607人、手術件数は約6,935件に上り、徳島県下の中核病院として位置づけられています。 医学部附属病院と歯学部附属病院の統合により、医療設備や医療情報、人材を共用し、先端的な医療を効率よく提供することが可能。特定機能病院にも指定されており、高度先進医療の開発、実施などの取り組みにより、患者の視点に立った全人的な医療の提供を目指しています。

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導入の背景:PC環境に制約を受けにくいシステムのパフォーマンス向上とサーバー集約化による効率性を模索

徳島大学病院では、電子カルテや医事会計システム、医用画像管理システム(PACS)などの医療系システムをはじめ、オフィススイートや電子メールなどの事務系システムを、クライアント/サーバー(C/S)型システムで構築、運用管理していました。これらのC/S型システムは、必要に応じて追加開発や機能拡張、バージョンアップを行ってきたために、各システムが肥大化し、レスポンスが課題になっていました。

医療情報部門である病院情報センターの副部長・助教の島井 健一郎氏は、「医療現場のPCで利用するローカルアプリケーションのパフォーマンスが徐々に低下していることや、PCの機種や導入時期によってもパフォーマンスが異なる状況を改善したいと思っていました。そこで、SBC(Server Based Computing)方式のシステム運用に移行できないかを検討していました」と語ります。

2011年より、仮想化基盤が徳島大学病院のシステム環境に適応できるかどうかの検討を開始。検討の結果を島井氏は、「仮想化環境を導入することで、将来的にもセキュリティを担保しながら利便性を上げることが期待できると判断しました。以前から、他の医療機関でのシトリックス製品による仮想環境での病院情報システムの導入実績を耳にしていたので、その有効性には早くから期待をしていました」と話しています。

ソリューション:医療機関での豊富な導入実績を評価してXenDesktop を採用。
医師をはじめ医療スタッフの利便性、機動性を考慮し、タブレット端末も導入

仮想化基盤の構築プロジェクトでは、Citrix® XenDesktop® を採用し、2012 年7 月より仮想デスクトップの導入を開始。約半年かけてシステムの構築、テストを実施し、2013 年1 月より本番稼働しています。構築された仮想化基盤では、電子カルテシステムや医事会計システム、文書管理システム、オフィススイートなどがXenDesktop の仮想デスクトップ経由でクライアント端末に配信されています。また、歯科診療部門のシステムおよび放射線治療計画用のアプリケーションはCitrix XenApp® で仮想化され、ユーザーは仮想デスクトップや特定の端末からこれらのアプリケーションにもアクセスすることができます。

徳島大学病院では、合計約1,800 台のPC とタブレット端末からXenDesktop による仮想デスクトップを利用しています。これらの端末のほとんどは病院情報センターで管理している端末で、PC が約1,400台、タブレット端末が約250 台あります。そのほかにも、各医局に設置しているPC が百数十台あります。これらのPC およびタブレット端末にCitrix® Receiver™を導入し、ユーザーは仮想デスクトップ上に用意された単一のポータル画面から、各自の医療現場ごとに必要なアプリケーションにアクセスします。

基本的に、同じフロア内の移動が多い病棟の看護師は、カートに設置されたノートPC を利用しています。一方、必要に応じてさまざまなフロアの病室を行き来する、医師をはじめ薬剤師や管理栄養士、理学療法士などには、機動性を考慮しタブレット端末を配布予定で、環境を準備しています。タブレット端末からは、PC 同様に仮想デスクトップからアプリケーションを利用できるほか、特定の診療業務において必要な情報だけを最適な画面構成で参照できるよう、ユーザーメイドのビューワーによる、簡易版の診療情報参照システムの開発・整備も検討しています。

島井氏は、「電子カルテ自体の画面のままでは、画面の煩雑さに加え情報量が多岐にわたり過多なため、すべてを表示したままだと、患者さんによってはかえって混乱してしまう場合もあります。そこで、病院情報システム内に蓄積された情報の中から、その時に必要な情報だけをサマライズして、医師が患者さんに病状説明をする際の、よりよい補助ツールとしての活用を検討しています。また、医療スタッフが、診療業務中の状況を簡易的に記録し、ナースステーションや自部署に戻ってから、電子カルテシステムに転記・清書・同期するような利用方法・システム環境も検討しています」と話します。

XenDesktop を採用した理由を島井氏は、「他社のデスクトップ仮想化製品も検討しましたが、今時点では、我々、当院の病院情報センターのスタッフは、仮想化技術などに深い知識を持っているわけではありませんでした。そこで、医療機関でも豊富な導入実績を持つシトリックス社の仮想化ソリューションを採用することにしました」と話しています。

導入効果:XenDesktop の導入でアプリケーションのパフォーマンスの向上と院内業務を効率化

XenDesktop を導入した効果について島井氏は、「電子カルテをはじめ、仮想デスクトップ上で利用しているアプリケーションに関しては、パフォーマンスが向上しました。これにより、XenDesktop 内だけで業務のほとんどが完結する診療科や部門には好評です。業務の効率化で、患者さんへのよりよい診療が期待されます。今後もさらにXenDesktop 上で稼働するアプリケーションを増やすことで、より一層の院内業務の効率化を期待しています」と話します。

またこれまでは、PC のセキュリティ対策にトレンドマイクロの「ウイルスバスターコーポレートエディション」を利用していましたが、すべての仮想デスクトップにウイルスバスターコーポレートエディションを導入するのは運用管理面からも現実的ではありませんでした。そこで、仮想デスクトップにエージェントが不要な「Trend Micro Deep Security」を採用しました。島井氏は、「今後、ローカルアプリケーションをすべてXenDesktop 内に移行できれば、クライアントPC ごとのパターンファイル更新などの運用も改良され、病院全体としてより効率的なセキュリティ対策も実施できます」と語ります。

一方、XenDesktop 導入後のシステム管理面の効果を島井氏は、「運用管理を効率化するため、1 種類の仮想デスクトップイメージを用意し、XenDesktop のProvisioning Services の機能を使って管理、配信しています。これによりシステム管理の効率性を向上できました。また、現場のPC で問題が発生した場合でも現場に出向くことなく対応できることも増え、サポート業務の迅速性・効率性も向上しました」と話します。

現状ではローカルアプリケーションがいくつか残っているために、仮想デスクトップ上のアプリケーションとのパフォーマンスの差が顕在化し、新たな課題になっています。島井氏は、「特にPACS の起動や画像参照への操作に時間がかかるので、更改時期にXenDesktop に移行することを検討しています。またその他のローカルアプリケーションも、順次XenDesktop 上に移行していく計画です」と話しています。

今後のプラン:院外からのアクセス(在宅医療など)、BYOD の実現にも期待

徳島大学病院では、病院情報システムへの院外からのアクセス環境を構築することも検討しています。徳島大学病院は、隣に徳島県立中央病院があり、陸橋でつながっています。徳島県立中央病院では、ドクターヘリが稼働しており、県内の広域医療の基地としての機能も担っています。島井氏は、「ドクターヘリで徳島県立中央病院に搬送された患者さんを徳島大学病院で受け入れることもあり、一方で、徳島大学病院の患者さんを徳島県立中央病院に受け入れてもらうこともあります。このとき毎回、紹介状を作るよりも、直接、電子カルテを見てもらう方がより利便性、情報共有性も高く、患者さんへもより迅速で、正確な対応ができる場合もあります」と話します。また個人所有のデバイスを利用するBYOD(Bring Your Own Device)の実現も視野に入れています。島井氏は、「大学病院の医師は、臨床だけでなく、研究や教育にも携わっており、BYOD のニーズは高く、その利便性が期待されています。また在宅医療や訪問介護などにもBYOD は有効です。将来的に、院外からのアクセスやBYOD の実現手段としても、XenDesktop やシトリックスのサポートには今後も期待しています」と話しています。

電子カルテをはじめ、仮想デスクトップ上で利用しているアプリケーションに関しては、パフォーマンスが向上しました。これにより、XenDesktop内だけで業務のほとんどが完結する診療科や部門には好評です。業務の効率化で、患者さんへのよりよい診療も期待されます。将来的に、病院情報システムへの院外からのアクセスやBYODなどの実現も検討しており、XenDesktopに期待しています
- 島井 健一郎 氏

病院情報センター 副部長・助教 (診療放射線技師・医療情報技師・ITコーディネータ)

徳島大学病院

導入の背景

  • ローカルアプリケーションのパフォーマンス向上
  • サーバー集約と仮想化による管理性向上

ソリューション

  • XenDesktopにより、電子カルテを中心としたシステムを仮想デスクトップに配信
  • タブレット端末を採用し、医師や医療スタッフの利便性、機動性を支援

ベネフィット

  • アプリケーションパフォーマンスの向上
  • 院内業務の効率化
  • サーバー集約によるサポート業務の迅速化・効率化

導入アプリケーション

  • 電子カルテシステム
  • 医事会計システム
  • オフィススイート
  • 歯科診療部門用システム
  • 放射線治療計画用システム