2017年5月にリリースされたXenApp & XenDesktop 7.14で追加された新機能の中に「マルチタイプライセンス」があります。これは通常の製品ライセンス指定と何が違い、どのような事を実現できるのでしょうか?本ブログでは、実際の設定方法や想定されるユースケースについて紹介します。

Q. 「マルチタイプライセンス」とは?
A. 一つのXenApp/XenDesktopサイトの中で ”同時接続” と “ユーザーデバイス” ライセンスを共存させる機能です。

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それでは「マルチタイプライセンス」についてもう少し詳しく説明しましょう。

  •  サイト自体に対するライセンスを指定した上で、特定のデリバリーグループに別のライセンスを割り当てて利用
  •  同一サイト上でXenAppライセンス / XenDesktopライセンスの混在も可能
  •  XenAppライセンスおよびXenDesktopの同時接続、ユーザーデバイスライセンスの3種混在も可能
  •  設定や確認はPowerShellで実施
  •  製品種別(Product Code)(※1)とライセンスタイプ(同時接続・ユーザーデバイスライセンス)を指定

(※1) XenDesktopは「XDT」、XenAppは「MPS」です。余談ですが、「MPS」はシトリックス歴の長い方にはお馴染みのMetaFrame Presentation Server (3.0)の事ですね。バージョン3.0より現在のようなライセンスサーバーによるライセンス管理の方式となったため、このようなProduct Codeとなっています。


○条件や注意点

  •  製品種別に関わらず同一エディションであること
    ⇒残念ながらAdvancedとEnterpriseなどの混在構成には対応していません。
  •  個々のデリバリーグループとライセンスファイルを紐付けるものではない
    ⇒分割発行した同一製品ライセンスをデリバリーグループ毎に割り当てるといった使い方は出来ません。よって、本機能でデリバリーグループ毎に同時セッション数上限をかけるといった用途には適合しません。
  •  ライセンスが二重消費される利用シナリオがある
    ⇒ユーザーデバイスライセンスを取得しているユーザーアカウントや端末から、同時接続ライセンスが割り当てられているデリバリーグループのリソースに接続した場合等(ダブルホップ接続のケースも含みます)には二重消費されます。
  •  Studioのライセンス管理メニューで確認出来るライセンス使用状況は、サイト自体に指定した製品/エディションのライセンスのみ
    ⇒他のライセンスの使用状況はライセンス管理コンソールで確認します。

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上図はXenApp Platinum Editionライセンスを割り当てたXenApp、XenDesktop Platinum Edition ユーザーデバイスライセンスを割り当てたXenApp、XenDesktop Platinum Edition 同時接続ライセンスを割り当てたVDIの3つのデリバリーグループに3台の端末からそれぞれ接続した時のライセンス使用状況です。


○設定方法

1. ライセンス管理コンソールで新たに割り当てたいライセンスを追加しておきます。

2. StudioからPowerShellを起動します。

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3. 作成済みのデリバリーグループに対し、コマンドでライセンスを割り当てます。例えば、「Win2012R2EXTGR」というデリバリーグループにXenAppの同時接続ライセンスを割り当てる場合には下記のコマンドを実行します。
Set-BrokerDesktopGroup -Name Win2012R2EXTGR -ProductCode MPS -LicenseModel Concurrent

4. Get-BrokerDesktopGroupを実行して設定状況を確認します。
Win2012R2EXTGRに対しMPS・Concurrentのライセンスが割り当てられていることが確認できます。

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  •  ユーザーデバイスライセンスが割り当てられているデリバリーグループがある場合は、通常どおりudadminコマンドでライセンスの割り当て状況が確認できます。

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  •  ちなみに、このサイトにはXenApp 同時接続ライセンスが指定されていますので、Studio のライセンス管理メニューで確認できるライセンス消費状況はこのライセンスに関するものとなります。

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以上がマルチタイプライセンスの設定・確認方法となります。


○想定されるユースケース

例えば「社員は500名いるが同時接続数は200程度にしてライセンス費用を抑えたい、しかし経営層の20名はいつでも接続できるようにしておきたい」といった要件をよく耳にします。
このようなケースの場合は、以前だと一般従業員用のXenApp 200ライセンス + 経営層用の20ライセンスをご購入頂き、それぞれのXenAppサイトを作ってライセンスを割り当てる、という形をとる必要がありました。この場合、要件は満たせますがControllerなどの管理コンポーネントもそれぞれ用意する必要があるため、システム構成が複雑になりコスト増や運用負荷が上がるといった課題がありました。

マルチタイプライセンス機能を活用すると、このケースでは一般従業員用のXenApp 200ライセンス + 経営層用のXenDesktop 20ライセンス(ユーザーデバイス)となります。同一サイト上にそれぞれの環境を構築できるためシステム構成もシンプルになり、コスト削減も実現できます。

このようにXenApp/XenDesktopはバージョンアップの度に痒い所に手が届く製品になってきています。もし過去に導入を検討したものの要件が合わず導入を見送られた方がいらっしゃいましたら、最新のXenApp/XenDesktopならご満足いただけるかもしれません。