みなさん、こんにちは。4月に執筆したブログ『Citrix Cloudを使ってみた』に続き、今回はXenApp Essentialsを構築・評価しました。本ブログではXenApp Essentialsの特徴および構築方法、さらにXenApp and XenDesktop Serviceとの違いをまとめました。
- XenApp Essentials の特徴
XenApp Essentialsは、Microsoft社のRemoteAppの後継として位置づけられた製品です。ユーザーが利用したいアプリケーションをすべてAzure上のXenAppサーバーにインストールし運用します。またリモート接続時に必要なNetScalerや管理ツールに必要なコンポーネントおよびデータベースは、Citrix Cloud上で用意されています。システム管理者はActive Directoryとアプリケーションの管理を行うだけで、ユーザーにインターネット経由でアプリケーションを容易にかつ安全に利用する環境を提供することができます。
このXenApp EssentialsはMachine Creation Services(MCS)によるイメージ配信を利用したシステムで、ウィザードに沿って操作することで簡単にセットアップが行えます。1台1台にアプリケーションをインストールしたVDAを用意する必要はありません。言い換えればMCSの機能を使わず個別にアプリケーションサーバーを用意して公開することはできません。それを実現する場合はXenApp and XenDesktop Serviceをご利用いただくことになります。
- XenApp Essentials の構築
事前準備
・Azure MarketplaceよりXenApp Essentialsを購入する。
(月々1人あたり$12、最低25ユーザーより)評価版はございません
・Azure上にActive DirectoryサーバーとアプリケーションサーバーのマスタVMを作成する。(Windows Server 2012 R2もしくはWindows Server 2016を用意)
*実際はXenAppはEssentialsに限らずMCSを使う場合はマスタのAD参加は必須ではありません。
・言語切り替え(デフォルトは英語OSのため日本語言語パック)
・“仮想ネットワーク”の属性“DNSサーバー”にActive Directoryを指定
設定方法
1. Azure サブスクリプションの準備とリンク
XenApp Essentialsで使用するAzureサブスクリプションアカウントを作成します。
Azure Resource Manager (ARM) はAzure Active Directoryを使用して認証を行うため、Azure Active Directoryのテナントに対してグローバル管理者ロールと、サブスクリプションに関するオーナーの権限が必要になります。対象のサブスクリプションに対して、リソースグループ、仮想ネットワーク、ストレージアカウント、インフラ仮想マシン(Active Directoryサーバー)を作成します。Citrix Cloudと通信を行うために仮想ネットワークのDNS設定ではパブリックDNSを設定します。(Azureの作法ですが、手動でXenApp サーバーにDNSのIPアドレスを振ってはいけません。)
2. マスターイメージの準備
セッションホスト用の仮想マシンを準備します。対象セッションホストにServer 用のVirtual Desktop Agentをインストールします。(Citrix CloudのXenApp and XenDesktop ServiceのDownloadより入手)VDAインストール後、利用するアプリケーション(業務アプリ)をインストールします。Citrixで事前に準備されたイメージファイルがあります。(Windows Server 2012 R2)こちらを利用する際は、あらかじめアプリケーションをインストールする必要があります。
※VDAインストール時はMCSを選択します。
※作成後マスタVMはシャットダウンします。電源ONの状態だとエラーになります。(重要)
画面1:Citrix Cloudよりダウンロード可能
3. カタログを作成しアプリケーションをユーザーに公開(Citrix Cloud ポータルでの操作)
Citrix Cloudの画面より設定を行います。My ServicesにあるXenApp and XenDesktop Serviceをクリックして下さい。(製品はXenApp Essentialsですがこちらの選択をお願いします。)
画面2:Citrix Cloudの画面
画面3:XenApp Essentials Serviceの初期画面
1でサブスクリプション、2でマスターイメージの作成が完了していることが前提になります。
ウィザードに従ってカタログを作成します。
1 カタログ名を指定します。
2 AzureのSubscriptionと事前に作成したVirtual Networkを指定します。
3 ドメインを指定します。事前にサービスアカウントを作成しておきこちらに入力します。
4 マスターイメージを指定します。(設定項目が複数ありますのでご注意下さい。)
5 XenAppサーバーのサイズを指定します。
画面4:生成するVMのサイズおよび台数を指定
作成する台数など細かな設定を行います。Azureの良さは必要に応じてマシンの数やサイズを増減できることです。ピーク・オフピークの時の調整が可能です。
6 Start Deploymentをクリックします。カタログが作成されます。約1-2時間程度かかります。
画面5:カタログ作成画面
この手順に従って進めるとCitrix Cloud Connectorは自動的に2台作成されます。これはCitrix Cloudと接続するためのサーバーとなりますので電源OFFしないようにお願いします。
7. アプリケーションをユーザーに公開
画面6:アプリケーションの公開
公開したいアプリケーションを登録し、ユーザーに割り当てます。すべてウィザードで指定できます。
8. プロファイル管理の設定(オプション)
More Settingsにて、プロファイル共有のUNCパスを入力します。
9. RDSライセンスサーバーの設定
VDAはRDS CALを要求するため、RDSサーバーのFQDNを指定します。
10. アプリケーションへのアクセス(StoreFrontサイトに接続)
画面7:許可されたアプリケーションが表示
アイコンをクリックすると、公開したアプリケーションが起動します。
画像8:効果アプリケーションのChromeが起動
・XenApp EssentialsとXenApp and XenDesktop Essentialsの違い
詳細はこちらのマトリックスをご覧下さい。注意点としては以下の通りです
- XenApp Essentialsは、アプリケーションのみの配信になります。そのため公開デスクトップは利用できません。
- XenApp Essentialsはアプリケーションサーバーをイメージ管理しています。そのためVDAを1台1台用意する方式ではありません。
- XenApp Essentialsは二要素認証がサポートされていません。理由はNetScalerおよびStoreFrontはCitrixが管理するクラウド上にあるためです。二要素認証が必要な場合は、XenApp and XenDesktop Serviceをご利用下さい。
- StoreFrontとして利用するURL名は変更できません。
- XenApp EssentialsのリソースロケーションはAzure以外ご利用になれません。
・まとめ
XenApp Essentialsはアプリケーションのみを利用する小中規模のシステムには、最適なソリューションです。Azure上でサーバーをすべて管理するためオンプレミスにハードウェア資産を持たず、いつでもどこでも利用できる環境が実現します。また月額課金ですのでアクセスが増えそうなときは増やし、使わないときは減らすことも容易です。クラウドならではの手軽さが人気の要因です。
しかしながら要求仕様(二要素認証、デスクトップの公開)については残念ながら本製品では適用できません。その際はXenApp and XenDesktop Serviceの利用をご検討下さい。
・リンク集
XenApp Essentialsのマニュアル http://docs.citrix.com/en-us/citrix-cloud/xenapp-and-xendesktop-service/xenapp-essentials.html
XenApp Essentials 設定ガイド http://download.microsoft.com/download/C/D/A/CDA5C4B4-031C-4225-8B75-2C216D07F55A/3_2_EvaluationguideforXenAppEssentials.pdf
XenApp Essentials Service – FAQ https://www.citrix.co.jp/global-partners/microsoft/resources/xenapp-essentials-faq.html
Citrixブログ
Citrix Cloud の構成を整理してみよう https://citrixblogs.wpengine.com/2017/05/08/citrix-cloud-constitution-jp/
Citrix Cloudを使ってみた https://citrixblogs.wpengine.com/2017/04/18/citrix-cloud-jp/